Thursday, March 27, 2014

【後編】鏑木毅さんによるUTMF&STY対策トークイベント@アートスポーツ・ODBOX本店


前回のお話

 前回は2014年3月25日(火)の18:30~20:00にアートスポーツ・ODBOX本店で行われた鏑木毅さんによる2014年UTMF & STY対策トークイベントの前半部分、コースマップと標高図を見ながら行われたポイント解説の様子をお伝えいたしました。UTMFのコースを試走するどころか現地に行ったこともなかった私にとっては具体的にレース展開がイメージできて大変参考になりました。

 前回について詳しくはこちらからお読みください。

UTMF攻略のポイント

 今回はそのトークイベントの後半部分、鏑木さんによるUTMF攻略のポイントについて紹介させていただきます。

①トレーニング&準備編

◯3週間前までが勝負

 3週間前までに、「ロングトレイル」を、「できれば2日連続」で行えればベスト。
ただし、UTMFのコースは現在まだ雪が残っていたりして危険なので試走はできればしないほうが良い。今からロングトレイルを行うのであればUTMFのコースの代わりに、「伊豆(ITJ)コース」、「箱根外輪山コース」がおすすめです。「ロングトレイル」の「ロング」の時間がどれくらいかというと、1日目は6時間〜8時間連続で走り続けるくらい。2日目は5〜6時間でOKです。

◯レース計画の策定

 自分がどのくらいのタイムで各エイドステーションに行けるかを、コースマップや標高図とにらめっこしながら事前に計算しておくと良いです。これは実際に走る前にコースを頭に叩き込むためにも必要な作業です。

◯装備準備は1週間前までに

 UTMFは必携装備品が多いので、レース本番の1週間前までには余裕を持って準備を終えておくのが良いでしょう。できれば事前に本番でパッキングするものを全部詰め込んで走ってください。事前に背負って走ることでパッキングの微調整(肩や腰のストラップ調整など)を本番前にすることができます。

②レースマネジメント編

◯装備 

  • 雪対策:今年の大雪の影響はまだトレイルに残っており、4月後半とはいえ、UTMFレース当日までにどのような状態になるのか現時点では分かりません。トレイルに雪がある程度残っていることを前提に準備しておいたほうが良いでしょう。具体的には、溶けかけた雪の上を走ることでシューズが濡れてしまうことなどが懸念されます。濡れたままの状態で走ってしまうと、体温の低下を招いてしまいます。そうならないためにも当日の状況を見ながら、ゴアテックスを使用した「防水シューズ」 や、「防水ゲイター」 を使用しましょう。
  • 当日の天候確認:UTMFの場合、レース3日間の天候をしっかり予測、確認して頭にいれておくことが重要。幸いにも過去2回の大会では天候に恵まれたので、今年もそうだと思うかもしれませんが、大雨になる可能性もあります。夜の山で大雨になった場合、かなり気温も下がり、相当厳しいレースになるでしょう。そういったことも想定しておく必要があります。もし荒れることが予測されるのであれば、ドロップバッグで着替えやシューズを用意するなど、雨への対策は必要不可欠です。
  • ドロップバッグがポイント:上記にもつながりますが、当日の天候に合わせて補給食以外に必要に応じて着替えなどをしっかりと準備することが大切です。
  • ストックなし:去年までの大会と大きく異なる点ですので注意が必要です。自然保護、トレイル保護の観点から、今年からはストックは一切使用禁止になりました。ストックが使えないので、難易度はさらに上がることになります。前半部分のまだ足が残っている時から無理に登りで足の筋力のみでグイグイ行かず、手で膝を押してストック代わりとするなどの対策を取りましょう。前半〜中盤で過度に足の筋力を使うことは避けるようにしてください。

◯補給

  • やはり基本はジェル:UTMFでは「11か所」のエイドステーションがあり、それぞれで補給食を提供しますが、それに頼りすぎてはダメです。必ずジェルを必要数持ってきて、しっかりと各自のペースに合わせて摂取してください。鏑木さんクラスの)トップランナーであれば100マイルレースを走る場合、90分を過ぎてから、30分に1個のペースで摂取していけばいいですが、一般的なランナーであれば40分~45分毎に1個のペースでいいかと思います。ただし、これは個々人で異なりますので必ず自分やその日の体調、コース状況に合わせて摂取するようにしてください。
  • 温かいものを:100マイルレースなど長時間のレースでは疲れからや、寒さで胃腸が食べ物を受け付けなくなります。エイドでは率先して温かい物を食べるようにしてください。もしサポートクルーの方がいらっしゃる場合には、サーモスのステンレスボトル「お味噌汁」を入れて持ってきてもらったり、「塩気のきいたお粥」を作ってもらうと良いでしょう。塩気のきいたお粥は疲れた体に染み入ります。

○ペースコントロール

  • 序盤がカギ!:いかに後半に向けて足のダメージを少なくできるかが完走のコツです。そのためには、登りよりも下りパートに要注意!下りパートをどれだけ慎重に走れるかが重要です。前半では小さな疲労感であったとしてもそれが後半には大きな負担、ダメージにつながっていくことになります。100マイルレースですので、いつもの短めの練習ランのような下り方を本番でもしないように十分注意してください。少なくともA8西富士中学校」まで「足をためる」感覚で大事に足を使ってください。

③メンタルマネジメント編

  • 何故辛い?:辛く感じるのには様々な原因があります。主だった原因は以下の4点にまとめられるかと思います。

    1. 低血糖状態
    2. 疲労
    3. 眠さ
    4. 筋肉・関節トラブル


     100マイルという長距離レースでは、一旦精神的に落ち込んだり、調子が悪くなっても(適切な対応を行えば)必ずまたあがってきます。まずは冷静に、自分が落ちる状態になった原因を見極めることが重要です。その上で上記4つのいずれかが原因だと判断できた場合は以下の対処方法を試してみてください。

      低血糖状態⇒ジェルを摂取。
      疲労または眠さ⇒仮眠を取る。休むという判断も完走するためには必要です。
      筋肉・関節トラブル⇒重要なのはトラブルになる前の段階で処置を行うことです。トラブルに発展しないように、下りパートでのペースコントロールが重要になります。また、コンプレッションタイツテーピングを使用して未然に筋肉・関節トラブルを防ぐことも大切です。鏑木さん自身も2009年のUTMBではテーピングでしっかり固定ができず、かなり痛みが出てきて、後半はずっとなんで最初にしっかりとテーピングしなかったんだということばかり頭に浮かんできたようです(私も普段はコンプレッションタイツやテーピングはしない派なのですが、ちょっと今回ばかりは使用したほうがいいのでは・・・と鏑木さんのお話を聞いて思ってしまいました)。また、変調のシグナルを見逃さない、ということも重要です。痛みが出る前の、まだ違和感の間にストレッチするなどのケアを行いましょう。UTMFの場合は、ケアをしてくれるスタッフの方がいるエイドステーションもありますので、違和感を感じたらスタッフの方にしっかりケアしてもらいましょう。
  • 次のエイドに集中!:100kmを過ぎる頃になると、残りの60kmを走ることを考えると絶望しがちです。ですので、残りの全部の距離でレースを考えるのではなく、まずは次のエイドステーションに行くことに集中してください。次のエイドステーションに到着するまでやれることは何か、自分に問いかけ、そこに集中することが重要です。次のエイドステーションについたらそこで一息ついて、また次のエイドステーションまでの区間を頑張ろう、そして次のエイドについたらまたその次のエイドまで頑張ろう・・・ということの繰り返しで、行程をエイド間で細かく区切りながら前に進んでください
  • 楽しむ心を忘れない!:皆さんは何故誰に頼まれたわけでもないのに自ら進んでこんなとてつもなく大変なことに挑戦しようと思ったんでしょうか?間違いなく、レース中に「地獄とはこのようなものか!」と思う時がきます。ただ、困難な壁を乗り越えた時、今まで経験したことのない幸福感を感じることができるでしょう。そこではスタートする前とは異なる世界が見えていると思います。169kmの旅を終えて、河口湖八木崎公園に戻った自分は、今までの、走る前の自分とは違う自分になっていることに気付くでしょう。その自分に出会えることを楽しみに、辛さを乗り越えゴールを目指して頑張ってください。

④Q&A

 Q: 100マイルという長距離レースを完走するための秘訣は?
 A: セルフマネージメントがいかにできるかが重要。レース後半はメンタルコントロールが全てです。

 Q:サポートクルーは必要ですか?
 A: もしつけることができるのであればサポートはつけたほうがいいです。チームとして一緒に戦っているというメンタリティも生まれて頑張ることができます。サポートをつけることができる場合、携帯電話が通じる場所に来たらエイドに到着する前にクルーに電話して、次のエイドステーションで自分が何を必要としているかを的確に伝えてください。防寒具や着替えの準備、水やジェルの補充などです。中盤以降、エイドステーションに到着すると疲れから何もできずボーっと座ってしまったままになりがちですが、事前にどのようなサポートが必要かをクルーに伝えておけば、自分がそのような状態になっていたとしても、サポートクルーが自分に代わってしっかり準備してくれます。

 Q: テーピングは必要ですか?
 A: 重要です。特に中盤以降、自分の体を守ってくれます。慣れていないと最初は固められて走り辛いと思うこともあるかと思いますが、あるとないでは後半の走りが変わってきます。後は個人の好みですがコンプレッションタイツでもいいと思います。

 Q: レースに向けて準備がしっかりできなかった時の対策は?
 A: UTMFは4月後半のレースということもあり、シーズンとしてもまだ序盤ですので、準備不足でレースに臨む人も多いでしょう。完璧な状態でレースに臨めるということの方が少ないので、準備不足であってもその状況でできることをしっかり行い準備していくことが大切です。レーススケジュールも重要です。UTMBで3位になった2009年は、UTMBが開催される2か月前の6月終わりに米国でThe Western States 100-Mile Endurance Runに参加したのですが、間隔としてはちょうど良かった。反対に、UTMBで7位に終わった2011年は、その直前に出た50マイルレースの疲れがUTMBでも残ってしまい、レースに影響を与えてしまった。こういうこともあるので、目標とするレースを基軸に他のレーススケジュールを組むことが重要になります。

 Q: 防寒対策は?
 A: 特に夜、汗をかいたままエイドで休んでしまうと体温が急激に下がってしまうので、エイド毎にダウンジャケットを羽織るなど防寒対策をしっかりすることが大変重要になります。

 Q: ジェルを摂取するタイミングについてもう少し詳しく教えてください。
 A: 先ほどは40分~45分に1個と説明しましたが、登りのトレイルの状態など、エネルギー出力の具合を見て臨機応変にジェルを取るタイミングを調整してください(鏑木さんは2009年、2011年のUTMBの2回ともエネルギー切れ=ハンガーノックになったんですが、いずれも長い登りパートでハンガーノックになってしまったということで、長く続く登りの前に補給をするなど対策を講じたほうが良いということでした)。

 Q: レース中、ジェルがのどを通らなくなるのですが、対策はありますか?
 A: その場合、ジェル1個を一気に摂取するのではなく、5分くらいかけてゆっくり飲むようにしてください。また、夏のレースの場合は、ジェルフラスクに希釈して飲みやすくするなどしてください。また、温かいものを食べる、胃薬を常備するなど、胃腸をしっかりとケアすることも重要です。

 Q: レース中、筋肉や関節が痛くなってしまった後の対策はありますか?
 A: 足の前面部、大腿四頭筋などの筋肉の痛みであれば我慢して続けてもいいですが、靭帯や腱などの痛みは一度痛めてしまうと半年ほど治療にかかってしまうこともありますので、あまりに痛みが続くようでしたらレースをやめるという判断も重要です。筋肉の痛みと、靭帯、腱の痛みの違いは説明が難しいので、ご自分で経験するしかありません。


最後に

 昨日と今日とで前編後編に分けてお送りいたしました、アートスポーツ・ODBOX本店で3月25日に行われました鏑木さんによるUTMF & STY対策トークイベントのまとめ、いかがだったでしょうか?無料で一般公開されていたイベントだったということもあり、今年UTMFやSTYに参加するけどこのイベントに参加できなかった(もしくは来年以降チャレンジしたい)皆さんの参考になれば、と手書きメモと自分の記憶を元にまとめさせていただきました。録音していたわけではありませんので書き漏らしたり、聞き漏らしたりした箇所もあるかもしれませんが、重要な部分はお伝えできたのではないかと思っています。トークイベント当日はSTYよりUTMFに参加される方が多かったこともあり、解説もUTMF中心となっておりましたが、STYを走られる方にも共通する部分は多いのではと思います。

 残り1か月で今年のUTMF & STYが始まります。今年走られる皆さんはレースに向けて後悔の残らないよう、しっかり(無理せず!)準備して、当日はお祭りを楽しみましょう!私も今年UTMFに初参戦します。河口湖の会場やトレイルで皆さんとご一緒できるのを今から楽しみにしています!

Wednesday, March 26, 2014

【前編】鏑木毅さんによるUTMF&STY対策トークイベント@アートスポーツ・ODBOX本店

 

はじめに

 今週末の六甲縦走キャノンボール大会の装備品調達のために、たまたま改装オープンしたばかりのアートスポーツ・ODBOX本店@御徒町にでも行こうかとググったところ、ちょうど今日(3月25日)、あの鏑木毅さんによるUTMF & STY対策トークイベントが夕方開催されると告知されているじゃないですか!鏑木さんは私がトレランにはまるきっかけとなった(人生を狂わせた?)まさに張本人。米国で初めてトレイルランニングやウルトラランニングという言葉を知り、日本での状況を調べた時に最初に飛び込んできたのがこの鏑木毅さんのお名前でした。ご本人に会うことは米国にいた4年間は夢でしかありませんでしたが、その間、米国のトレイルランニングコミュニティに足を踏み入れ、大会の大小、場所、距離も様々なレースに出る度に、鏑木さんがきっかけではあったのですが、いつの間にかトレイルランニング自体にどっぷりはまっていました。鏑木さんご本人に会える日が来るなんて当時は想像もしていなかったのですが、偶然というかたまたま今日、その日が唐突に来てしまいました。会場には鏑木さんのサポーターと言えばこの方、ゴールドウインの三浦務さんのお姿もあり、DVDが擦り切れるほど何度も何度も繰り返し見たお二人の姿を見れただけで今日はもうお腹いっぱいでした・・・。

 と、ここで終わっては単なるファン日記となってしまいますので(笑)、本日鏑木さんから教えていただいたUTMF & STYの攻略法をこちらでもお伝えいたします!

2014年度のコースについて

 今年のコースは先日発表された通り、2012年に開催された第1回目と同様、時計回りコースに。しかし今回は本栖湖をぐるっと回るため、コース総距離は2012年の156kmから169kmに13キロも伸びることに。マイルにして約5マイルなので今回は100マイルではなく105マイルレースという、距離だけ見てもさらに過酷なレースに。累積標高差も2012年の同コースが8,530mだったのに比べて今回は9,478mと、こちらも948mも増えてしまいました。これは序盤~中盤にかけて相当慎重にレースを構築していかないと後半は生ける屍状態になること必至です。

 それでは鏑木さんによるポイントをご紹介します。以下のUTMFのサイトに公開されているコースマップ、標高図と見比べながらお読みください。



【A1富士吉田~A2二十曲峠】
 序盤にある杓子山から立ノ塚峠の下りは岩場(ガレ場)が多く走れません。岩場ではしっかり三点支持で転ばないようにしましょう。

【A3山中湖きらら~A4すばしり】
 普段ここだけトレランするのであれば最高のコースですが、ほとんどの市民ランナーは夜中に走ることになりますので風景を楽しんでいただけないのが残念です。また、この区間は16.4kmというエイド間の距離がかなり長いので補給などに気をつけてください。

【A5富士山御殿場口太郎坊~A6水ヶ塚公園】
 この区間が今回のコースではもっとも寒いポイントになります。特に水ヶ塚公園あたりはトップランナー以外の市民ランナーでは真夜中~明け方に走ることになり、かなり冷えますので防寒対策をしっかり取ることが重要です。太郎坊~水ヶ塚間は富士スカイラインを走ることになります。ここはトレイルではなく、舗装道です。

【A7富士山こどもの国】
 ここがUTMFの中間点です(厳密にいうと半分ではないですが)。ここはドロップバックを受け取れるエイドですのでしっかり補給、休息してください。というのも、この後、A8の西富士中学校までは24km続くエイドなしでは最も長い区間になります。富士山こどもの国でどれだけしっかり準備できるかが重要です。

【W1~A8西富士中学校】
 標高図を見るとフラットに見えますが、実際はこの区間は細かいアップダウンが続きます。西富士中学校の後にはあの天子山地が待っていますので、絶対に、こどもの国~西富士中学校までは調子が良かったとしても飛ばしすぎないことが重要です。

【A8西富士中学校】
 ここが100km地点(104.4km)。ほとんどのランナーにとって100kmを超えて走ることは未知の領域だと思います。ここからが本当のレースです。新たなスタート地点だと思ってください。レース攻略のカギとしては、いかに西富士までの100kmを余裕をもって走れるかです。西富士の後の天子山地は一気に1000m以上登ります。100kmを超えてのこの山登りはかなり厳しいです。西富士ではしっかり休息し、仮眠も取るほうがいいでしょう。西富士中学校での過ごし方がこの後の60kmがどうなるかの要となります。

【A9麓~A10本栖湖】
 端足峠~竜ヶ岳の登りもかなりキツいです。ただし、竜ヶ岳から見える富士山の風景は格別ですので見れる方は楽しみしておいてください。竜ヶ岳から本栖湖にいたる急で長い下り坂も要注意です。このくらいになってくると登りよりも下りのほうが足にきます。

【A10本栖湖】
 ここのエイドも仮眠が取れますので西富士かこの本栖湖でしっかり仮眠を取りましょう。ここを過ぎれば残り30kmです!

【A10本栖湖~A11鳴沢】
 中ノ倉山~パノラマ台も細かいアップダウンが続く難所です。ただここの森は美しいので風景を楽しんでください。

【A11鳴沢~Finish河口湖八木崎公園】
ここまで来ればゴールまで後少し。紅葉台、足和田山がありますが、そこを乗り越えて笑顔でゴールできるように頑張りましょう!

 制限時間は46時間あります。UTMFウェブで公開されている関門時間、遅い選手の時間から自分のレース展開を予測しておくことが重要です。なお、ウェブにある遅い選手の時間だと、A5太郎坊、A6水ヶ塚、A7こどもの国のタイムが関門時間よりも遅くなっていますが、これは2012年の第1回大会の時の、最後に走った選手のタイムをもとに計算されています。つまり、今年2014年のレースでは2012年に最も遅かった選手のタイムで走ってしまうと関門にひっかかってしまうということです。それだけ今年のレースの難易度が上がったということですのでご注意ください。


 以上、2014年UTMF &STY コースの鏑木さんによるポイント解説紹介でした。私も今までまともにコースマップや標高図、エイドごとのポイントなど見たこともなかったので(←単なる準備不足)、目から鱗の役立つ情報だらけで非常にためになりました。鏑木さん、ご丁寧に本当にありがとうございました。

次回予告

次回のブログではこの日のトークイベントの後半に行われた「UTMF攻略のポイント」をご紹介いたします。内容は以下の通りです。
  1. トレーニング&準備編
  2. レースマネジメント編
  3. メンタルマネジメント編
  4. Q&A

こちらもレースに向けてかなりためになりましたので乞うご期待!

あとがき

 今回のトークイベントでは、レース解説の前に、2014年度のコース発表が遅れたことについて、本当にご迷惑をおかけしましたと鏑木さんから謝罪の言葉がありました。原因としては鏑木さんは直接はおっしゃってなかったのですが、地元の皆さん、市町村との調整を慎重に進めた結果だと思います。地元との調整は鏑木さんや事務局の関係者の皆さんにとって、私たち参加者が想像する以上に大変なことだったと思います。しかもその交渉は一回限りではなく、毎年根気強く続けなければなりませんので相当の時間と覚悟が必要です。
 ここで重要なのは、北米やヨーロッパと違い、トレイルランニングというスポーツ自体が日本ではまだまだ新しいスポーツであり、競技人口も非常に少ないということです。マイナースポーツであるため、トレイルランニング自体に対して多くの誤解があります。その誤解をひとつずつ解いていき、この新しいスポーツを日本に根付かせるためには数十年くらいのスパンがかかるかもしれません。でもそういった努力をしていかないと、このトレイルランニングというスポーツ自体が禁止されるという大変なことになってしまう可能性もゼロではありません。
 地元の市町村、住民の皆さんのトレランに対する理解を深めるためには、トレイルランナー個々人のマナー向上が非常に重要になってきます。ごみをトレイルに残さない、トレイルを傷めないように注意するなどは最低限のマナーとしていつも気をつけるべきですね。それに加えて、山を楽しんでいる登山者、トレイルをハイキングしている方への挨拶、横を通り抜ける際の声掛け、時には止まって道を譲るなど、欧米では当たり前となっていることを私たち一人一人がトレイルを走る度に行うことで、同じ山を、トレイルを愛する人たちの理解も少しずつ深まっていくのではと思います。なんて、偉そうに書いていますが、これはそのまま私自身に対しての言葉でもあります。トレランを愛する者同士、引き続き協力して周りの人たち(まずは家族からか・・・)に理解してもらえるように頑張っていきましょう!

Tuesday, March 25, 2014

【雑記】六甲縦走キャノンボール大会に向けて


 日本復帰後の初レースであった板橋Cityマラソンを無事走り終え、ようやくどこか自分の中で一区切りついた気がした。日本に帰ってきてから引越しやら仕事での新しい業務、そして第二子が生まれたこともあり、日常生活を日常にすることに精一杯で、いつの間にか走ることに割ける時間がほとんど無くなった生活になってしまっていた。アメリカでの4年半で走ることは生きることと同義に近くなっていた自分にとってそれは生きてるけど死んでるような感覚だった。もちろん子どもや家族、友人たちとの時間が一番だけど、人はご飯を食べるだけではダメで、寝ることも生きていく上では必要なように、そういった時間と走ることは自分にとってはどちらも大切で、どちらも生きて行く上で欠かせないものだった。徐々に空気が薄められていっているような、水の中でもがいているような息苦しさの中でどうにか空気を求めて見つけた解決策が、蓋を開けてみれば何ともない、早朝の時間だった。この時間は家族にも、仕事にも影響をそこまで与えることなく自分の時間として使える1日の中で唯一の時間帯。毎日ちょっと睡眠時間が少なくなったって、トータルで見ればオールオッケーだろうと始めた早朝ランが軋み始めていた自分の歯車の潤滑油となって回してくれた。まだ薄暗い中、新聞配達のバイクのお兄さんか、公園で散歩か太極拳をしているおじいちゃんおばあちゃん以外は数人のランナーしかいない、そんな東京の街を走ることでようやく日本での生活のバランスが取れ始めた。数年前、いや数ヶ月前の自分からは考えられない朝型へのシフト。人間必要に追われれば案外頑張れるな、と、少しずつ朝トレの習慣がついてきた矢先のレースが板橋Cityマラソンだった。タイム的にはベストではなかったけど、それなりに走ることができたことは今の自分にとっては十分すぎる収穫だった。

 そしていよいよRoad to UTMF第二章である、六甲縦走キャノンボール大会が今週末に神戸で開催される。そもそもまだトレラングッズ自体全部引越しのダンボールから荷解き出来ていない状況で大丈夫かという不安も若干あるけど今までのようにまずはスタートラインに立つことが重要なんだ。とはいえ準備や下調べなしに出ることがいいというわけではないし、1ヶ月後のUTMFも見越していかなければということもあるので、ここはおとなしくキャノンボールのウェブサイトに記載されている必携品をチェックすることにした。

 [必需品] ライト、携帯食、水分、防寒具、フル充電の携帯電話、地図、非常時のお金、レインウエアー、保険証、コップ  
六甲縦走キャノンボール大会ウェブサイトより

 うん。ほとんど引越しのダンボールを漁ればなんとか見つけられそう。だけどコップやレインウェアーは調達しないと。コップはアメリカで何度も使えるものが売ってたので買っとけばよかったとちょっと後悔。とりあえず明日御徒町のアートスポーツに行って物色してみることに。(全くの蛇足だけど明日鏑木毅さんのトークショーがアートスポーツで開催されるらしい!すごい偶然!)

 ここで今さらだけど、六甲縦走キャノンボール大会について簡単に紹介します。以下がウェブサイトに記載されているルール。自分はある意味この文章を読んで参加を決めたといっても過言ではない名文。

<ルール> エンジン以外何でもあり。人力、MTB、馬、ミニチュアポニー・ウィングスーツ、グライダー、スケボーなどなど、とにかく六甲縦走路を一番早くゴールした者が勝者です。 死なない。 自己責任のうえ参加し、事前にリスクを回避する能力があること。 怪我や事故等が発生しても自ら対処してください。 道に迷いそうな人は必ず地図を持参する事。 あまり文句を言わない。 ゴールは18時30分で閉鎖致します。 各種目のスタートは2部制で行います。どちらを選択して頂いても構いません。
六甲縦走キャノンボール大会ウェブサイトより

 適当と言えば適当な、そんなルール(なのか?)で行う壮大な草レースもとい大人の大遠足大会。コースマークもエイドステーションもなく100キロ以上の山道を走るというのはアメリカ広しと言えどもさすがになかった。ただ、UTMFを1か月後に控えた今、一度はこれくらい無茶なことに挑戦しておくことが、UTMFという未だ登ったことの無い巨大な壁に立ち向かおうとしている自分には必要な気がする。


 なんて思いつつ、さらに下に読み進んでいくと「マナー&注意事項」の中に衝撃の注意事項が・・・。

「万が一、ポリスに捕まってもキャノンボールランの名前は出さないように願います。」

 一体どんなレースなんだ、キャノンボールって・・・。


 この大会、距離やソロ、ペア、チーム、キャンプなど様々なカテゴリーに分けられていますが、自分が参加するのは一応最もドMと言われている「POWER」の部。どんな種目かというと↓。

■POWER
日時:3月29日(土)~30日(日)1部 21時スタート、2部 22時スタート
受付:1部 19時~20時30分、2部 20時~21時30分(須磨浦公園)
距離:112km
スタート&フィニッシュ:須磨浦公園~宝塚湯本台広場~須磨浦公園
参加費:3,500円(保険料含)

 このご時世、オフィシャルなエイドがなかったとしても3,500円という圧倒的とも言える参加費の安さはアメリカのローカルトレイルレースを彷彿とさせるような、素晴らしい価格設定だと思う。ただし、東京から参加する自分にとっては結局新幹線代などでそれなりに経費はかかってしまうという当たり前すぎる現実に気づいたのはポチッた後だったことはここだけの話・・・。
 ちなみに「POWER」の部のエントリーリストはこちらから。233人がエントリーしているようです。

 さて、「POWER」以外で注目なカテゴリーは何と言っても「GAY」!どんな種目かというと↓。

■GAY(男ペア)
日時: 3月29日(土)~30日(日)スタートは勝手にやってください。
受付:なし 
距離:168km 
スタート&フィニッシュ:宝塚湯本台広場~須磨浦公園~宝塚湯本台広場~須磨浦公園
参加費:7,000円(保険料含)

 7,000 円の参加費取るのに、「スタートは適当にやってください」やら「受付:なし」という清々しいまでの放置プレーっぷり。何気に距離は最長でUTMFとほぼ互角。こんなカテゴリー、誰も参加しないだろ(笑)と思い、エントリーリスト見てみたら・・・

いました。一組(笑)。

 世の中はまだまだ広い。狭い日本だってとことん広い。そう感じさせてくれて「GAY」カテゴリーでした。「POWER」程度でビビっている自分はこの世界ではやはりまだまだ甘ちゃんすぎると再認識させられました。

 ということで、日本に戻って徐々にランのほうもエンジンがかかってきました。今年の予定はこのキャノンボール後は、ハセツネ30KUTMFサロマ湖100Kと続いていきます。まだまだ行きます。日本でも。Run Forward。

Sunday, March 23, 2014

【Race Report】2014板橋Cityマラソン


 日本に帰国してから初めてのフルマラソンとなった板橋Cityマラソン。先週の3月15日(土)にはカラーラン@東京ドイツ村でこんな(↓)感じで色塗れになったのですが、これはランというよりはピクニックで走っている人のほうが異端という、走りたいランナーにとっては少し消化不良な大会でした。これはみんなでワイワイ色をかけあって楽しむお祭りですね。



 そして今日、3月23日(日)、アメリカ生活時代と比べると格段に練習量が下がってしまった中でしたが、六甲縦走キャノンボール大会や、UTMFの練習ということもあり、走ることにしました。

 4年半もアメリカにいたので日本のレース作法に疎くなっており、Bib(ゼッケン)をシャツの前後にそれぞれつけることに軽いカルチャーショックを受けて準備。ただ荷物一時預かりについてはアメリカよりも日本のほうが効率がいいな〜とは先週のカラーランから思っていました。アメリカの場合は必ず係員にFamily NameのA-Z順で決められた所に預けなければならず、預けた荷物はトラックなどに積まれ、レース後には、係の人が1つずつ荷物を探して渡すため30分〜1時間くらい待たされることもありました。それと比べるとゼッケンの末尾の番号のテントに自分で置いて、自分で受け取るというシンプルさは革命的でした(笑)。

 9時レーススタートということで8時には最寄りの埼京線浮間舟渡駅に着いたのですが、そこから続く人の波に色んな意味で飲み込まれてしまいました。レースにはキッズランや5Kの人たちも入れると約1万7千人参加ということですので人は多いのは当たり前なのですが。
 レースコンディションは写真を見ていただいてもお分かりになるように快晴で風も朝は微風。暑さだけが心配でした。



 8時過ぎには会場に着いたのですがトイレの列がハンパない!(↓)



 アメリカでも並ぶには並ぶのですがここまではなかなか。結局トイレに辿りつくまで40分かかりました・・・。トイレ終わってから着替えてシューズ履き替えて荷物をテントに預けて、と準備に追われていたら準備運動などする時間は全く無くなり、開始数分前に何とかスタートラインに駆け込めました・・・。日本の場合、陸連の人たちが先に走るので、一般参加の私はその後。会場にはゲストで有森裕子さんもいらっしゃったのですが、その姿を拝見できたのはスタートラインを通過した時だけでした。でも精一杯応援してくれて元気もらえました。号砲から実際にスタートラインを通過するまでにかかった時間は3分。こんなもんかと思っていたのですがその後も荒川の河川敷をひたすら走るコースなので、道も狭く、また申告タイム順でゼッケンとスタートラインの並び順が決まってるはずなのに、ゼッケン上ははるか後ろにいるべき人達がわらわらと前を走っており、かなりの交通渋滞。結局折り返し地点を過ぎるくらいまであまり状況は変わらず、でもこれが日本のマラソンなのかと言い聞かせ、抜けるところで一気に何人か抜く、というのを繰り返しました。
 気温も予想通り暑くなったのでエイドステーションでは積極的に給水。コップ2杯は毎回飲みました。後、持参したS!Capsとジェルを1時間おきに摂取しました。

 折り返し地点までは追い風だったので、帰りは当然ながら向かい風なんだろうな・・・と思っていたのですが予想以上の追い風で心が何度も折れそうになりました。ただ周りに人は多かったので適宜集団を形成し、風を避けつつ後半残り10キロまで粘り、最後はタイムや他のランナーというよりも風と花粉との戦い、ゴールしました。

 タイムは昨年12月にメリーランド州のNorthern Central Rail Trail Marathonで出したPR、3:26:13には及ばず、手元の時計では3:34。風はあったものの全般的にフラットなコースだっただけにちゃんと練習していれば・・・と少し後悔。最近はレースに出るたびにPRを出していただけに残念でした。次に向けて頑張る材料ができたということで。

 レース中に日本最高〜!と叫びたくなったのは、エイドステーションでのアンパン、クリームパンやおにぎり、そして走るまで知らなかったのですが板橋Cityマラソン名物のシャーベット!もちろん味わって食べるまではできませんでしたがアメリカの必要最低限の、というかそっけないエイドと比べると天と地、ファミレスと高級レストラン(←これは言い過ぎ)くらいの違いで感動しました。ゴール後のある意味地元をあげてのお祭り的な、屋台の豊富さにも驚きました。カレーやラーメン、ビールなどがかなり良心的な価格で提供されており、もちろん美味しくいただきました(笑)。

 




ゴール後、アメリカでは大抵のレースでメダルをもらえたのですがそれが無かったのがちょっと物足りなかったのですが、それを差し引いても日本のレースを久々に楽しむことができました。レース中未舗装の箇所もあったのですが私はむしろトレランのいい練習だと喜んで走っていたのですが、あそこで心が折れた方も多くいたようですね。ランナーたるもの、どのようなコースにも対応できるように常日頃から鍛えておくべきなのでしょうが、とはいってもああいったコースで喜んでしまう自分はつくづくトレイルランナー(変人ランナー?)なんだなと思ってしまいました。

 足もダメージがほとんどなく、今週末の六甲縦走キャノンボール大会も無事?出場できそうです。こっちのほうが距離的にもコース的にも真剣に取り組まねばならないのですが、今夜くらいはゆっくりとお酒飲んで休みたいと思います。

 今日走られたランナーの皆さん、そして何より運営スタッフ、ボランティアの皆さん、本当にお疲れ様でした!